遊覧者/人形使い
でも詰め込まれているのか
どうにも焦点温度の上昇はみられないのだけれど
ただ一点
冷たい道があり
それは水脈ともいえた
欲求
私は渇き
その水の匂いを求めて
単細胞生物の走性でその一日をはじめたのであった
―付与
求めたものは与えられた
その日
曇り空の下
傘をささない人々の中にあって
私ひとりが滑稽にもずぶ濡れていた
そこで止むことのない悲しみが質量であると知る
扉をいくつか開けたが
変化への期待は裏切られ
階段をいくつかのぼったが
しなやかな上昇の気流は一筋もなく
ただ永い浄化の時を耐えるしかないと
それらの抽象を思い知ったわけ
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