スローモーションで行けばいい/望月 ゆき
 
くさんあるだろう。
けれど、今よりははるかにたくさんのものを、わたしはとらえて離さなかった。

なぜ今、目の前を通り過ぎる日々が、手をのばせばつかめるほどのゆっくりとしたスピードで動いているのに、わたしは手をのばさないのだろう。
通り過ぎる日々の中身は、あの頃と大きくはかわらないはずなのに。
なぜ今は、日々の中でキラキラ輝いている(であろう)ものを見落としてしまうのだろう。
いや、もしかしたら。
見落としているのではなく、見過ごしているだけなのかもしれない。
あれからもう20年ほどの、生きてきた月日の中でわたしは、見ないふりをするくせを身につけてしまった。
見ないふりをすることで
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