言葉の距離/嘉野千尋
 
   *      *

 真っ白な紙の中央に、ほんの数行、メッセージを書いてみてください。小さな文字で、けれどはっきりと。大きすぎる余白の中で、書き付けは不安定に見えるでしょう。心もとない感じ、とでもいうのでしょうか…黄金率の話ではないのですけれど、綴られた文字とその余白との間に、もしも「ふさわしい関係(あるいは比率)」があるのだとすれば、例えばB5のノートの真ん中にたった数行記される言葉というのは、その文字と余白との関係から外れているのかもしれません。
 そうして記された言葉のどれほどを、遠くから見る人は「読んで」いるのでしょうか。あるいは、遠くからその文字をなぞる人の目には、もはや文字
[次のページ]
戻る   Point(7)