贋者アリスの洞窟の冒険/佐々宝砂
 
思い切り蹴り上げる。ぐらぐらとあっけなく埴輪は崩れ、みっともなく不釣り合いに小さな裏側の顔がこちらをむいた。可哀相な存在よ、埴輪でしかないおのれの力を幻想する哀れな存在よ。あたしは腰を落としてどっちにも折れ曲がる便利なその膝に接吻する。両面宿儺はひくひくと痙攣しながら身体を小さくし、双頭のゼニガメにかわってしまった。

滋養分のない水が滴る洞窟。目のみえない無数の生き物たち。ほかに世界を知らない、小さな生き物たち。ここで生まれ、ここで生き、ここで生殖し、ここで死んでゆく、盲目で、小さくて、何の役にもたたなくて、誰からも注目されない、微かな生き物たち。なんと愛されるにふさわしい存在なのかしら、
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