ひとつ腹の下/黒川排除 (oldsoup)
 
立てに 妻は妻立てに頭から突っ込んであった 家には屋根が無く 娘たちはいつも発情していた 箱階段のふちをかじり すべての食品を拒否する 皿は冷蔵庫で冷やして 時々隣の家に投げ込んだ 空虚な大きいものがわたしの中で一部分を占めてそこを満たすものは食欲ではなかった ほかの部分は総じて三日月の形をしていた 夜空にそういった月がかかるとき 背の高い草がぼうぼうに生えた一角を決め込んでわたしは行ったり戻ったりした 灯りの付いていない離れの食卓から家族の笑い声が聞こえると わたしは笑いながら帰っていき 笑いながら包丁立てを蹴飛ばしていた すべての家財が横倒しになった恐るべき家 親戚一同ですら壁を歩き わたしは
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