左川ちかアーカイブス/佐々宝砂
い。詩がいくらか、さらに肖像写真もあるとなりゃ、私は簡単に恋に落ちる(笑)。
ヘンな話だけれど、最初に私の眼をひいたのは、左川ちかの写真だった。それはいかにも野暮ったかった。しかも全然美人でなかった。一重まぶたの細い眼、ぼてぼてした唇、黒縁のメガネ、素っ気なく短い髪、ベレー帽、自分で縫ったんじゃないかと思われる色気も何もないブラウス。意志がつよそうで理知的な雰囲気を持つ尾崎翠と、女王然として優雅な野溝七生子の間にあったから、それで余計に野暮ったく見えたのかもしれない。しかし、今思えば、野暮ったいからこそ気になったのだ。私自身も、野暮ったくて、メガネをかけていて、口紅を塗るとぼてぼてする唇
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)