沈黙翻訳家/後期
 

沈黙は商品になった。



ある日、警察が来た。
連続事件だった。

被害者は全員、沈黙翻訳家。
部屋には録音機だけが残る。

録音には長い沈黙。
誰も翻訳できない。

三十分の沈黙。
呼吸がない。
衣擦れもない。
椅子の音もない。

それは人間の沈黙ではなかった。



犯人は見つかった。
ある男。
ほとんど話さない。
ただ沈黙している。

私は録音を聞く。
沈黙だけが続く。

理解した。
彼は沈黙しか話さない人間だった。
言葉が存在しない。
翻訳単位も存在しない。



その夜、自分の沈黙を録音した。
再生す
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