沈黙翻訳家/後期
。
沈黙翻訳は解釈報告であり、断定ではない。
私は無罪だった。
だが、その日、私は気づいた。
沈黙は誤訳されるのではない。
そもそも正解が存在しない。
※
沈黙を捏造する人間が現れた。
彼らは沈黙を設計する。
呼吸を整える。
椅子の音を計算する。
指や机の微かな触れまで作る。
翻訳される沈黙を作るのだ。
私はその男の沈黙を訳した。
「私は何も隠していない」
三日後、横領の証拠が見つかった。
沈黙は演技だった。
※
沈黙の闇市場が生まれた。
政治家。企業。裁判。
「誠実に見える沈黙を作ってほしい」
依頼が来る。
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