沈黙翻訳家/後期
、音だけだ。
呼吸。椅子の軋み。指先の微かな震え。
どちらも、同じ沈黙に見える。
私は初めて、沈黙が誤訳されることを知った。
※
裁判に呼ばれた。
沈黙裁判だ。
検察官が言う。
「あなたの誤訳が会社を破綻させた」
私は答える。
「沈黙には原文がありません」
検察官は笑う。
「翻訳者の言い訳だ」
裁判長が尋ねる。
「あなたは沈黙を断定したのですか」
私は首を振る。
報告書には書いてある。
解釈A 65%
解釈B 30%
不明 5%
沈黙翻訳には信頼度がある。
医師の診断書のようなものだ。
裁判所は結論を出した。
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