誤読/後期
 


「これはフィクションである。実在の人物・団体とは一切関係がない。」

 すると読者は安心して読んだ。
 安心すると人は疑わない。

 次の版ではこう書いた。

「これは事実である。」

 今度は皆、疑いながら読んだ。
 疑いながら読むと、どんな文章も陰謀に見える。

 同じ本文なのに、評価は真逆になった。両陣営が私を味方だと主張し、
その結果、私は両方から訴えられた。

 つまり誤読は本文の問題ではない。
 姿勢の問題である。

 ある読者が言った。
「先生、この主人公はあなたですね?」

 私は答えた。
「あなたです。」

 読者は怒った。
[次のページ]
戻る   Point(3)