不明/後期
 
ただ確認されたという事実か。

もっとも、放送にさえ乗らない失踪もある。

家の中で、ひとりの老人が、少しずつ道順を失っていく。
昨日の夕食を忘れ、
今朝の自分の年齢を忘れ、
やがて自分の名の重みさえ、手放していく。

家族は気づく。
だが町は気づかない。

所在は明らかだからである。
住所も部屋も、戸籍も保険証も、きちんとある。
外から見れば、その人は確かにそこにいる。

だがその人自身は、
自分の内側で、どこにいるのか分からなくなっている。

それは捜索の対象にならない。
放送の文面に適さない。
年齢と身長と服装で言い表せない。

だから沈黙する。
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