いた。/後期
。
いた。
書類を揃え、印鑑を押し、
昼には定食屋で味噌汁を飲む。
何も感じない。
感じないことが、少し気になる。
ドロドロのまま。
向かいの席の男が笑う。
箸を動かしながら、
世間話をする。
天気の話。景気の話。
誰かの引っ越しの話。
俺は頷く。
頷きながら、
その男の喉の奥を想像する。
声が生まれる場所。
暗くて、ぬるい。
指を突っ込むと、
吐瀉くする繊細なドアノブ。
それを掴んで廻してもいいが、
蹴破るのも、日常の一部だ。
あゝ、いけない事を二人で
していたんだなぁ。こっそりと。
濡れた布と同じ匂いがする気がする。
誰も疑わ
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