客人/後期
の人は首を振る。
「外ではない。内だよ。」
そう言う。
内とはどこか。
胸のうちか、頭のうちか。
原稿を書きながら、突然筆を止める。
そして、しばらく動かなくなる。
私は台所からそっと覗く。あの人の肩がわずかに震えていることがある。泣いているのかと思うが、そうではない。ただ何かと戦っているように見える。
客人がいる、とあの人は言う。
私は思う。
客人などいない。
いるのは、あの人自身だ。
あの人は他人様の罪を書く。裏切りや嫉妬や、胸の奥の濁ったものを、容赦なく紙に落とす。読むと胸が冷えるような話ばかりだ。あの人はそれを「真実」と呼ぶ。
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