小説の習作 原稿用紙三頁 #08/田中教平
 
らず、頭を抱えていたのだった。原稿用紙二十枚分。
その不満を聞いてユウスケは
(それは『山』をもう一つでもこしらえなければなるまい)
と思っていた。山というのは正岡子規が提唱した概念で、例えば「これは山場」と云われるが、ユウスケにとって山、とはふくらみのある、文章の総量の大きな物、又は事件でもいい、雑多な語りでもいいのだが、山場と違って山は、もっと広義な意味に捉えていた。
 そして、彼女の小説には山が必要だと思った。
「もう一つ事件でも入れ込んでみたら」
「そうだけどねぇ、もう事件ばっかりなのよ」

 ユウスケはカップラーメンの豚骨味を食べ終えるとその片付けの一切をカナに任せた。
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