明日から冬は居なくなるようだ。/山人
込み、ほほを雪が殴り、ひょーひょーと戸の隙間から入り込む風の声を聴くことが無くなるのだ。冬の雪の中に擬態した私たちは一時(いっとき)冬と集団生活をしていたのに、もう別れなければならない。ずいぶん理不尽で不毛な労働や無駄な出費だったのに、それがどうしようもないくらい哀しくもあるというのだ。まったく、不思議な感覚だ。これは私の幻の思い出だったのかもしれないが、遠い昔、私が幼いころ、母の丸い背中で眠っていた。夜の吹雪の中、母はきっと彷徨っていたのだろうか。狐火に誘われて、母はたぶん狼狽していたにも関わらず、私はそうして母の背中で丸くなって眠っていたのだった。あの瞬間から私と母はどこかに行ってしまったので
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