大寒の頃/田中教平
 
スケならば友人もユウスケで、後はちょこちょこ電話をかける事が、カナにとっての交際だった。
 ユウスケに現代訳源氏物語全十巻を買ってもらった。その一巻を通じた読書体験が、カナの孤独を癒やし、カナを徐々に変えていった。徐々に、というのはなるほど物語というものは遅効性のものらしい。
 しかし源氏物語も、二巻目でその語りに難しさを感じると、読むのをやめてしまった。残りの八巻分も含めて源氏物語は、ユウスケの暇を潰す道具になった。
 その代わりにカナは現代小説を読むようになった。ある日、書店にてカナとユウスケは文庫コーナーをグルグルとまわって品定めしていた。
 ユウスケは芥川賞受賞作、川端康成賞受賞作
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