河童伝・第六話「見返す水」/板谷みきょう
ていたのです。
ある朝、川の底から、泡が一つ、二つ、上がりました。
音はなく、知らせもない。
ただ、水が、水自身の深さを思い出しただけでした。
婆さまは、その様子を見て、ぽつりと言いました。
「……来るな。」
何が、と問われ、婆さまは首を振りました。
「来るのは、あっちじゃねぇ。」
「見に行くのは、こっちだ。」
その夜、村の集会所に、人が集まりました。
川が落ち着いた今こそ、
この話を“きれいに”語り直そうという相談でございます。
三郎は尊い犠牲だった。
河童は村を救った。
だから、この土地は恵まれた。
そう語れ
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