河童伝・第二話「皿の水は誰のもの」/板谷みきょう
 
数えてる。」

耳を澄ますと、確かに聞こえる。

一つ、二つ、三つ……

それは水を汲んだ回数でも、救われた命の数でもない。奪われた“居場所”を、確かめる声でございました。

ついに村は、皿の欠片を川へ返すことにしました。

けれど、川に投げ入れても、欠片は沈まず、ふわりと浮かび、岸へ戻ってきてしまう。

そのとき、婆さまが言いました。

「返す先が、もう無いんだべ。」

村人たちは、ようやく悟りました。

三郎は神にもなれず、妖怪にも戻れず、ただ“使われ続ける存在”になっていたのだと。

夜明け前、村は一つの決まりを作ります。

井戸の水を汲む前、必ず
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