河童伝・第二話「皿の水は誰のもの」/板谷みきょう
 
必ず皿に一滴、返すこと。

すると不思議なことに、井戸の水は少しずつ減り、代わりに、川がわずかに息を吹き返しました。

それ以来、村ではこう言い伝えられております。

「水は、借りるものだ。」

三郎の名は、もう神としては呼ばれません。

ただ、夜更けに水を汲む者だけが、欠けた皿に向かって、声にならぬ礼を置いていくのでございます。

……それが、誰の水だったのかを、忘れぬために。

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