The Wasteless Land./田中宏輔2
 

当時は、手袋や扇と同様に、服装の一部をなすアクセサリーとして重要なものでした。
なかには、宝石が縫いつけられたり、豪華な刺繍が施されたりしたものもありました。
十七世紀になりますと、一般の婦女子のあいだでも用いられるようになりました。
形見の品として譲り渡されたり、愛の印として贈られたりしました。
こういった例を、文学作品のなかから、いくつか採り上げていきましょう。
つぎの文章は、スタンダールの『カストロの尼』において、主人公が、自殺するまえに
手紙とハンカチを、自分の恋人に手渡してくれるように、ひとに頼むところです。

『どうして、あんなに字が汚いのかしら。
ひと文字、ひ
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