母さんはね(修正版)/板谷みきょう
た消しゴムの
消しきれなかった、白く擦れた傷跡。
??わたしは何を信じていたのだろう。
忙しくても、ちゃんと父親のことは理解してくれていると思っていた。
寂しさも不満も、子どもの心は柔らかいはず。
だから勝手に吸収してくれると。
思い込んでいたかったのは、わたしの方だった。
机の端には『にんじん』が置かれていた。
角が丸まり、色があせ、勝手に開いた頁は、まるで助けを求める手紙のようだった。
夕焼けの台所で、息子が言った言葉が胸に蘇る。
「うちは父さんも母さんも優しくて良かったよ」
あれは、誰を安心させる為の言葉だったのだろう。
あの一言を、わたしは免罪符
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