母さんはね(修正版)/板谷みきょう
がひっかかった。それでもわたしは、軽く応じてしまった。
「またふくれて寝ちゃったのよ。
ね、今日はプロレス観に行く約束、破っちゃったから…」
そう言いながら、わたしは密かに安堵していた。
あの子は拗ねても、泣いても、最後には眠りに落ちてしまえる子だった。
寂しさも不満も、翌朝になれば「おはよう」と笑って溶かしてくれる子だった。
??わたしたちは、その“強さ”に甘えていたのかも知れない。
“そういう子”だと都合よく信じていた。
「起こさないでね」と言いかけた時には、夫はすでに部屋の中で立ち尽くしていた。
その背中は、声も出せずに崩れていくようだった。
嫌な
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