湯屋 ?/月乃 猫
 
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白い吐息に、

深山は十六夜の雪明り
影を踏む音も 粉雪にすわれ、


 人の気配など
ありようもない午の刻
新雪に足跡を残しては、
森をさまよい
 さまよい
 

  ・
 

言い伝えに
 湯屋は、峡谷にあり
炭焼きや狩人の仕事の 簡素さで、
並んだ岩に わずかな板塀でそれとわかるもの
里人など知る由もない
営みを離れ
獣も眠りにつくころやってくる
異形のものたちを気遣い
そこにある
乳色の湯は、もうすでに
気配と影があるのに
けして、湯気の立ち込める
中に形をなさず
湯煙に佇む
透き通る雪のような肌の娘は
都人を思
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