紫陽花と秋桜の話(修正版)/板谷みきょう
 
ぼして、紫陽花の花の色は、青から深い蒼へ。そして、やがて夜明け前の空のような、静かな淡い色へと変わっていきました。

色が抜けていくたび、紫陽花の小さな想いも、少しずつ、土の中へ落ちていきました。

まるで、あの秋桜が、その想いをそっと拾ってくれるのを待っているかのようでした。

そして季節が巡り、丘の向こうの空気が、ふと、物寂しくなった頃。

秋桜が咲きました。

その花は風に揺れて、まるで光の滴をこぼすように、温かい紅の色を灯しました。

秋桜の足もとには、夏にはなかった、柔らかな湿り気がありました。

それは、土が夏の間ずっと大切に抱きしめていた、紫陽花の小さな想
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