紫陽花と秋桜の話(修正版)/板谷みきょう
 
な想いでした。

秋桜は、どこか遠い季節の優しい面影を感じて、花びらをそっとふるわせました。

風が、もう一度、二人の間を通り抜け、静かに囁きました。

「咲く季節は違ってもね、花たちの本当の想いは、土の深いところで、ちゃんと手をつないでいるんだよ。お互いの、寂しさも、嬉しさも、すべて。」

秋桜は空を見上げ、紫陽花が立っていた場所をいとしく思いやるように揺れました。

それから、どれほどの年が過ぎたことでしょう。

紫陽花の根と、秋桜の根は、土の深いところで、いまも触れあっています。

そして、季節ごとに違う色の風が、優しく、二人の間を行き来しているのです。

「見えない扉は、きっと、いつも、月の光にまぎれて、遠い日の記憶を優しくつないでいる。」



※原作「紫陽花と秋桜の話」を修正しました
https://po-m.com/forum/i_doc.php?did=364618

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