灰色の鬼(修正版)/板谷みきょう
むかし、北の山あいに、たったひとりだけ色のちがう鬼がいました。赤鬼でも青鬼でもありません。その鬼の肌は、冬の曇り空のような――淡く沈んだ灰色でした。
仲間の鬼はみな、虎の褌を締め、強さのしるしのように誇らしげでしたが、灰色の鬼だけは、どこで拾ったのか、くたびれた熊の毛皮を、頭からすっぽりと、かぶっていました。その姿は、群れのどこにも属さない影のようで、気づけば鬼は、山のどこを歩いても、ひとりぼっちになっていました。
夜、山をわたる風は、木々の枝をそっと鳴らし、ひゅる、ひゅる、と歌います。灰色の鬼は、その歌を聞くたび、胸の奥が、ぎゅう、と音もなくしぼるように痛みました。
けれど、風
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