竹と朝顔(修正版)/板谷みきょう
 

竹の切りくずが風に舞って、
村じゅうの枯れ木に花を咲かせたことがあるんですよ。
それはそれは大騒ぎだったそうです。」

竹は、青かったころのこと、
雨にうたれ、風に吹かれ、いくつもの山を越えてここまで来た旅のことなどを、
たのしそうに、時には寂しそうに話しつづけました。

朝顔は、そのひとつひとつに耳をすまし、
ときどき小さく揺れては、ひっそりとうなずくのでした。

夜が少し深まり、
風の音もいよいよかすかになったころ、
竹はふと思い出したように、ひそっと言いました。

「朝顔さんは……いつ咲くのですか?」

その声は、相手の心の中に無遠慮に踏みこまぬよう、
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