虹の指輪(あぶくの妖精の話)/板谷みきょう
すかな温かさだけが、消えずに灯り続けていました。
娘は、誰かの落とした希望を拾うように、静かに日々を過ごしました。
凍える手を隠して隣人を助け、自分の食事を削って病人に施し、
報われることのない献身を、ただひとりで抱えながら。
それが彼女に与えられた、美しくも哀しい務めでした。
ある日、小さな包みが娘のもとに届きました。
開くと、そこには見覚えのあるはずのない虹のシャボン玉がありました。
月日に磨かれ、それは清らかな真珠の指輪となっていました。
白い光が、娘の指の上でそっと揺れました。
それはかつて、ひとりの少年が捧げた、ただひとつの愛のか
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