虹の指輪(あぶくの妖精の話)/板谷みきょう
 
のかたち。
そして、妖精だった娘自身が、忘れたまま抱きしめることになった、
静かな報いの証でもありました。


指輪の光の奥で、娘は胸の底に沈んでいた名もない痛みに触れました。
消えた記憶が、その縁だけをかすかに震わせました。


――ようやく出会ったのに、もう触れられない。


その寂しさだけが、そっと娘の手を包んでいました。


海から届いた祈りは、時を越え、一つの指輪となって彼女の手に帰りながら、
それでも行きつく先を持たぬまま、静かに胸の奥へとしずんでゆきました。


指輪の白いひかりだけが、
失われたものの影を、やさしく照らしていました。



※原作「虹のかけら(あぶくの妖精の話)」を修正しました
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