虹の指輪(あぶくの妖精の話)/板谷みきょう
 
精は虹のかけらを手にとりました。
小さな虹色の玉に祈りを包み、自らの自由と記憶を失うと知りつつ、
そっと少年の足もとへ置きました。


少年はその玉を胸に抱き、想い続けた少女へと願いを託しました。


その日を境に、少年の姿も、妖精の姿も、浜辺から消えました。


季節がひとつ過ぎたころ、罰を受けた妖精は記憶を奪われ、
冷たい風の町の片すみに、人間の娘として静かに生まれおちていました。


娘の暮らしは、町でいちばん貧しいところにありました。
自分がなぜ涙によく気づくのか、なぜ誰かの影によりそいたくなるのか、
それを問う記憶はありませんでしたが、
胸の奥のかすか
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