街燈(修正版)/板谷みきょう
村はずれの一本の冬道に、街燈はじっと立っていました。
雪はさらさらと降りしきり、夜は息をひそめています。その静けさは、まるで遠い昔、この世がまだ素朴だった頃の記憶を遠くに思い出させるようでした。
月が雲の切れ目から顔をのぞかせると、青く澄んだ光で街燈の笠を照らし、やさしいとも、さびしいともつかぬ声で話しかけました。
「お前は、こんなところで、まだ光っているのかね。この道を通る人も、もういまいに。」
街燈は、ひと呼吸おくようにして答えました。
「わたしは、ここを照らしているだけでじゅうぶんです。雪の下では草花が、春を待っているでしょう。小さな命が目ざめるとき、この道が暗
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