三木卓『わが青春の詩人たち』書評/佐々宝砂
 
の二十代半ばに書かれた詩も然りで、私は呆然と感嘆しているほかない。年譜の読後感と同じである。ただもう、羨望と賛嘆と畏怖なのである。

 しかし、かれら詩人の群に入り交じった三木卓自身もまた、先輩詩人たちを畏怖し、おっかないと思い、とてもたちうちできないと感じていたのだと思う。そんなふうに読者に思わせる点で、三木卓はとてもやさしい。かれは謙虚であるというよりやさしいのだと私は思う。三木卓自身の詩業について、かれはこの本の中ではほとんど触れていない。かれの最初の詩集が出たときなんかものすごく嬉しかっただろうと思うのに(かれの最初の詩集『東京午前三時』はH氏賞を受賞)、かれはそのような自分の業績に
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