全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
に堕落しなければならないのだ。このような言明に潜む意味は諸君にも理解できるように思われる。人は一心不乱に考えごとに耽っているとき、考察対象の中で自己を失い、精神的胎児を孕んだ意識そのものと化す。彼の知力の中の自分に向けられたすべては主題に仕えるために消滅する。そうした状態を高次の冪(べき)に累乗すれば、なぜ私がもっと重要な問題のために人格の機会を犠牲にしているのかが分かるだろう。実を言えばそれは犠牲でも何でもなく、私は実は一定の人格や諸君が強烈な個性と呼ぶものを欠陥の総和とみなしているのであって、この欠陥のせいで純粋〈知性〉は狭い範囲の課題に永久に投錨された知性と化し、その能力のかなりの部分をその
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