全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
 
の仕事につけただけでも、とんでもなくラッキーなんだぞ」
「わかってますよ」
「だったらなんでおとなしくしない? なにが問題だっていうんだ?」
「人は夢や希望といったものを一度持つと」と、ハドリーは少し考えてから説明しはじめた。「それをあきらめなければならなくなったあと、とてもつらい日々をすごさなくちゃならなくなるものなんです。あきらめること自体は簡単です。そのことだけならね。人が夢を捨てなきゃならないことってのはどうしてもあるものですからね。でも問題はそのあとのほうで……」と、ため息をつきながら肩をすくめ、「……夢がなくなったあとなにが残ります? なにもありません。そのむなしさは恐ろしいほど
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