全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
 
ほどです。途方もない虚無感。それがほかのことをなにもかも呑みこんでしまうんです。その空白は宇宙のすべてより大きいほどです。しかも日に日に大きく深くなっていきます、底なしに。ぼくのいってること、わかりますか?」
「わからんね」とペテル。それどころか彼にはどうでもいいことだった。
(フィリップ・K・ディック『空間亀裂』14、佐藤龍雄訳)

(…)シプリアーノは太古の薄明を自分のまわりにめぐらしつづけていた。
(D・H・ロレンス『翼ある蛇』上巻・14、宮西豊逸訳)

(…)駐屯所の兵隊や将校や書記たちは、すわった黒い目で彼女を見守りながら、肉体をそなえた彼女自身ではなく、人間の肉体的完成の
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