全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
巡りをし、また自分の唇に戻ってくるかのようであった。さらに谷を分け入って行けば完全に迷ってしまうだろうと思い、山の見晴らしのきく所まで登り、位置を確かめ、遙かに道路を見極めて、そこに向かって下りて行くことにした。
(フエンテス『脱皮』第二部、内田吉彦訳)
「〈きんのとびら〉の女と一緒の別世界にいっても、おまえはなんにも学ばなかったようだな。相変わらずの大バカ野郎だ。人生がどうだっていうんだ? あるがままの人生を受け入れられんのかね? おまえはいつもありもしないものに憧(あこが)れてるだけじゃないか。どれだけ大勢がおまえのことを、おまえの仕事をうらやましがってると思ってるんだ? またもとの仕
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