全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
に誘われて歩いて行くと、羊歯と泥に埋まった岩の間を走る一筋の流れに出会い、あんたはその源を突き止めたいと思った。ますます急になる道を喘ぎながら登り、滝に出たが、音は近づいたものの、源流はまだだった。音の不思議な手品によって、遠くのものが近くに聞こえ、ファルファーレの谷全体が人を欺く谺(こだま)の壁をめぐらし、闖入者を防ぐ方法を見つけたかのようであった。
ハビエルにそのことを話そうと思い、振り返ってみると、あんたは一人ぼっちなのに気がついた。ハビエルをどこかに置いてきてしまったのであった。あんたはいま自分がどこにいるのか知りたかった。大声で叫んでみたが、声はどこにも届かず、自分の頭の上で堂々巡り
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