全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
トラッコとヴラーラは全身を耳にしている。森林が語る。
(ホリア・アラーマ『アイクサよ永遠なれ』4、住谷春也訳)
森の中では、時として、みんな黙ってしまうようなことが起こるものだが、それは沈黙の中に、忘れ去ってしまった音がいっぱい詰まっていて、そんな時でなければ聞くことができないからだ。あんたが話してくれたように、森は、われわれが失ってしまったものを思い出させてくれる。その森の沈黙の中に足を踏み入れて、しばらくすると、忘れられた生活と出会うこともない日常生活を忘れ、森が、静寂や、驚嘆、疑念、沈黙の中に聞こえる囁きという、別の次元の力を借りて、われわれに過去を思い出させようとする。水の音に誘
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