全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
返しになった平底舟の下では蟹がちょこちょこと歩きまわり、掘ったて小屋の下では一人の黒人が気を失って倒れ、乾いた血がその胸に縞(しま)模様をつけている。ピンク色のホテルのすぐわきの石のベンチには、ライフルをかかえた老人が眠っている。事象の潮がひいて、底辺居住者の姿があらわになったようだ。
(ルーシャス・シェパード『戦時生活』第二部・7、小川 隆訳)
太陽は死んでいるのに、まだそれに気づいていない。でも、わたしたちは知っています。
(ジーン・ウルフ『拷問者の影』25、岡部宏之訳)
クロネッカーの鉄則である《構成なしには、存在もない》以来、純粋数学者のなかには構成的でない存在定理にポ
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