たもつ『父の献立』鑑賞 /室町 礼
、必ずどこ
か欠損するものだから。そこで〈家族〉は〈許
し〉を発明するしかなかった。
わたしのように最初から〈家族〉のない孤児
の場合は最初から〈許し〉もなく、実際わた
しは育ててくれたお寺の住職のことを思い
出して感謝することがあっても生み親のこと
をあまり考えたことがない。従って「許す」
も「許さない」もない。〈家族〉があらかじ
めないのだから。
この詩が示していることは突き詰めると
家族の「許し」の本質とは、家族が「欠落」
(母がいない)を共有しながら、それでも
「献立」を作り続けること。海に行けなく
ても、子が父を許す。溺れそうでも、空を
見上げるというこ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)