たもつ『父の献立』鑑賞 /室町 礼
 
と気づかされるから
です。家族は「許し合いながら生き延びる」た
めの、痛みを共有する装置であることを宿命
づけられている。だって血縁は逃げられない
もの。逃げられないとなれば互いに許し合うし
かない。しかし悲劇的なことにはその許しのタ
イミングが常にズレるようになっている。親
は先に「大人」になり、子は後に「大人」に
なる。
詩のように「父はわたしが産まれる前に / 大
人になってしまった」。許しのタイミングが
必然的にズレて役割の欠落が常にある。だか
ら許しは完結せず次の世代に受け継がれてい
くが、それは永久に完結しない。それという
のも〈家族〉に完璧な家族はなく、必
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