全行引用による自伝詩。 07/田中宏輔2
」
(アントニイ・バージェス『アバ、アバ』6、大社淑子訳)
「自分の良心に耳を傾ければ、答えてくれるはずだよ」
「神の声のように静かに囁く声のことですか」
「ように、ではないよ、メグ。良心は神の声そのもの、内部に宿る聖霊の声だ。聖霊降臨祭のための集?文には、全てのことに正しい判断ができますようにと祈る箇所がある」
メグは穏やかな口調で食い下がった。「でも、その声が自分の声ではないと、自分の潜在的な欲求ではないとどうしてわかるのでしょう。その声の言っていることは、自分の体験、個性、遺伝体質、内的欲求を通して考え出されたものにちがいありません。人間は自分の心の策謀と欲望から自由になれる
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