全行引用による自伝詩。 07/田中宏輔2
 
れるものなのでしょうか。自分が一番聞きたいと思っていることを良心が囁くということはありませんか」
「私の場合はそういうことはなかったね。良心は大体の場合、私の希望に反した方向に指し示した」
「あるいは、その時、自分の希望だと思い込んでいたこと、かもしれませんね」
 だが、これは食い下がり過ぎだった。コプリー氏は静かに坐ったまま、古い説教や法話、よく使う聖句からインスピレーションを得ようとしているのか、せわしなくまばたきした。ちょっと間を置いてから、彼は言った。「良心を楽器、たとえば弦楽器として考えるとわかりやすいと思うね。伝える内容は音楽にあるわけだが、楽器をいつも修理して、定期的にちゃんと
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