全行引用による自伝詩。 06/田中宏輔2
 
イ・ハリスン『ステンレス・スチールラット』18、那岐 大訳)

 記憶というものはなんと二股の働きをするものだろう。一方では現わし、他方では隠す。おれ自身の潜在意識は、おれと闘っていた。
(ハリイ・ハリスン『ステンレス・スチールラット』2、那岐 大訳)

 完全な感覚遮断にさらされたとき、人間の精神はたちまち現実の把握を失う。処理すべきデータの流入を阻(はば)まれた脳は幻覚を吐きだし、非理性的になり、最終的には狂気へと落ちこんでいく。長期にわたって感覚入力が減った場合の影響は、もっと緩慢で微妙だが、多くの意味でもっと破壊的だ。
(ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』12、浅倉久志訳)

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