全行引用による自伝詩。 06/田中宏輔2
 


 そしてまただれもが、そうとは知らずにたえず自身の物語を語っている。人間の身体は、うなったり、肩をすくめたり、無意識に動いたり、無数の表現方法でその人自身を語っているのだ。個性の少なからぬ部分が、意識のコントロールをすりぬけて表面にあらわれ、無意識は肉体をとおして自身を語る。
(グレゴリイ・ベンフォード『銀河の中心』小野田和子訳)

「はやく出ていきたいものだわ」
「かつてはここもすばらしい世界だったのでしょうがね」とホートは答えた。「息子さんはこの星を憎んでいました。いやむしろ、もっと具体的にいえば、この星で彼が見たものを憎んでいました」
「ま、それは理解できますね。あのおそろ
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