全行引用による自伝詩。 06/田中宏輔2
 
ュラ・K・ル・グイン『踊ってガナムへ』小尾芙佐訳)

 しかし、彼の笑顔はこの世にふたつとない笑顔だ。その笑顔を向けられると、人生で出くわすありとあらゆる不幸をそこに見るような気がする。ところが顔に浮かんだその不幸を、彼はあっという間に順序よく並べ替えてしまう。それを見ていると、今度は急に「ああそうか、心配することはなかったんだ」と感じるのだ。
 だから彼と話をするのは楽しい。その笑顔をしょっちゅう浮かべて、そのたびに「ああそうか、心配することはなかったんだ」と感じさせてくれるからだ。
(ダグラス・アダムス『さようなら、いままで魚をありがとう』31、安原和見訳)

 そして彼女は行って
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