全行引用による自伝詩。 05/田中宏輔2
 
》に、同時に彼女でもあり彼でもあるような誰かに、彼女よりもよく、彼よりもよく、彼ら二人を一緒に合わせたよりもよく理解できるような誰かに、それを待つことで彼が生涯を通してきたあの《同時代人》、そして今日エルサンのために彼ができることならそうなりたいと思っているあの《同時代人》に、さまざまなことを説明してもらいたいという望み。そういう公平な人間を、争う余地のないあの判断を彼はあまりにも当てにしすぎていたのだろうか? 彼は嫌らしいほど純朴だった。そうだ、少なくともこのことだけは彼も理解していた。すなわち、純朴さも嫌らしくなることがあり得るということだけは。
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』20、菅
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