全行引用による自伝詩。 05/田中宏輔2
 
、菅野昭正訳)

 ディディは手すりに駆けよって、まるでクジラたちが死のダンスを踊っているところへ手をさしのべようとでもするように、手すりから身を乗りだした。風が顔に吹きよせたが、風などまったく吹いていなかった。波しぶきがあびせかかった、クジラのように大きな波が、しかし海は静まりかえっていた。光がまぶしかったが、あたりはもう夜のやみだった。
(ソムトウ・スチャリトクル『スターシップと俳句』第一部・10、冬川 亘訳)

 世俗的な嘘がどうして精神により高度なビジョンをもたらすことができるのか、ルーにはおぼろげに理解できた。芝居や小説は比喩を使ってそれを行っている。そして比喩的な意味としては
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