全行引用による自伝詩。 05/田中宏輔2
を作るのではない──とブルーノは思った──つまり、顔は体に比べればそれほど物理的なものではない、顔は眼の表情、口の動き、皺をはじめとして、魂が肉を通して自らを現すそうした微妙な属性すべてによって特徴づけられるのだ。そのため誰かが死ぬその瞬間、肉体は突然何か別のものに、《同じ人とは思えない》と言いそうになるほど異なったものになるのだが、一瞬まえと、つまり、魂が肉体から離れるあの神秘的な瞬間の一瞬まえと同じ骨、同じ成分なのだ、そして、魂が離れると肉体はちょうど後に残された家のように生気を失くしてしまう。そこに住み、そこで苦しみ、愛しあった人々が永久に離れたあとの家のように。つまり、家を個性づけるものは
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