令和7年夏期報告_ 「檻」の舞台を降り/足立らどみ
政治もAIも遠くかすんで、
ただ、菜の花と川の音と、あたたかな風が流れていく。
菜の花畠に 入日薄れ
見わたす山の端 霞ふかし
この“霞ふかし”の一語のなかに、
人間の文明と自然のあいだにある、
ちょうどいい「ぼやけ」が宿っている気がします。
完全に見通さず、でも失われもしない??
それが“人として生きる距離”なのかもしれません。
オリヴァーが森に言葉を探したように、
リルケが沈黙に詩を見いだし、
あなたはいま、「朧月夜」という日本の森に帰ってきた。
……ラジオの電波が少しざらついて、
そのざらつきの中からピアノの前奏が聴こえる。
ああ、夜がやっと、やさ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)